ひふみのブログ

シンプルに生きる。

資本主義の権化

昨日は一緒に案件を進めていたコンサルティングファームの人と丸の内で飲んできた。
キツくて有名なコンサル業界、たがその分給料も良くマネージャーで年収1500万程度稼いでいると言っていた。

 

『稼げるけどそのぶん支出も多くてね・・』と、豪快な私生活の話を聞かせてもらった。そんな話を聞いてふと大学時代の友人のことを思い出す。

私の大学時代の友人、フクダ(仮名)も同じコンサルティング会社で働いていて、それはそれは豪快な生活をしていた。

 

・・・


フクダは学生の時から豪快な男で頭の中は『酒』、『女』、『金』のことばかり考えていて、理系の情報工学の学生の癖にイベントサークルを立ち上げウェイウェイ言わせるような奴だった。

 

タイプ的は自分とは真逆な感じの人間で普段一緒にいるグループは違っていたが、選択授業がきっかけで仲良くなり、不思議とウマが合い、試験前は二人で勉強したり、休みは遊びに行く間柄になっていた。

 

大学4年になりフクダが就職先として選んだのがコンサルティング業界。高給激務といわれる某外資系のファームから無事内定を獲得し、働きはじめてからも年に一回くらいの頻度で会って、彼のホーム(丸の内)で飲んでいた。

 

『UP or OUT(上に行くか辞めるか)』と言われるコンサル業界で彼はしぶとく生き残り、30歳手前の時には1000万近くの年収があると語っていた。

終電過ぎまで仕事をしてタクシーで家に帰り、シャワーを浴びて出社する。質の高いアウトプットを提供して、クライアントにバリューを提供し、高いフィーを貰う。

金は貯まるが同じようにストレスも溜まるから憂さ晴らしに夜飲みにも行くし、キャバクラにも行く。そこで金を使い、また必死に働いて金を稼ぐ。

昇給するにつれてさらに仕事の難易度はあがる。家に帰る時間がもったいないため、会社の近くのマンションを借りそこでも金を使う。

 

稼いでは飲む。

稼いでは買う。

稼いでは遊ぶ。

 

そうやって俺は経済を回しているんだと、資本主義経済の権化のような生き方をしていた。

 

そんなフクダは結局、食道癌にかかり亡くなってしまった。

33歳だった。

※食道癌は日頃の不摂生(酒や喫煙など)、生活習慣が原因でなる場合があり進行が早く若くして罹患することもある癌です。


手術が成功し一度お見舞いにいったことがある。痩せて細ってはいたが、これから良くなっていくんだという希望のある表情をしていて一安心したことを覚えている。

でもそれもつかの間、自分が地方に転勤となった後しばらくして、転移が見つかったと連絡がありあっという間に容体が悪化し亡くなってしまった。

 

お通夜に参列した時はあのエネルギーの塊だった彼の変わり果てた顔を見ることが怖くて結局、顔を見ることは出来なかった。

悲しくもあったがそれと同時にフクダの生きた人生についても色々考えてしまった。

自分の人生に満足して逝ったのか。

それとも後悔しながら逝ったのか。

そんな確かめようないことをグルグルと。

 

資本主義経済の波をサーフィンしまくり、急ぐように生きた彼は今埼玉の実家の近くの墓地でゆっくりと(?)眠っている。

 

・・・


昨日の飲み会の最後に、私の友人でフクダという奴がそちらで働いていたのですが、知ってますか?と聞いてみたが『うちの会社も人の出入りが激しいからわからないなぁ』と言われ彼の痕跡は確認できなかった。


飲み会終え丸の内をブラつきながら東京駅へ向かう。
思えばここでフクダと最後に飲んだ時からこの街もずいぶん様変わりしたなぁと気づく。

新しい高層ビルが次々に建ち外資系の企業も随分増えた。
二人で飲みに行った高級ワインバルも別の店に変わっている。


資本主義経済は成長していく。

変化していく。

古いものを捨てて新しいものへ変わっていく。

 

昔彼が『俺の庭だ!』と豪語していた丸の内に彼の生きた痕跡はもう残っていないと思うと寂しくなる。

 

久しぶりに奴の墓参りにでも行こうかな。